隣家からの落雪でカーポートの屋根がつぶれてしまったら
先日、全宅連彩央支部の研修会でこのテーマが取り上げられ、弁護士さんから解説がありましたので文章をそのまま引用し取り上げてみたいと思います。1、工作物責任(隣人への請求の可否)今年の大雪の際には、隣家からの落雪でカーポートの屋根がつぶれてしまったような被害も報告されました。このような場合、隣人に対して損害賠償請求できるでしょうか?可能性として考えらえるのは、「工作物責任」と言われるものです。土地の工作物の設置または保存に瑕疵があり、それによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者または所有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任負うとされているものです。「設置または保存に瑕疵」があるとは、その工作物の建造またはその後の修理等に不完全な点があることで、その種の工作物として通常備えているべき安全性が欠けていれば、瑕疵があると言えます。民法では「土地の所有者は、直接に雨水を隣地に注ぐ構造の屋根その他の工作物を設けてはならない。」とされています(民法218条)。この規定は雪にも類推適用されると考えられるので、屋根に積もった雪が隣地に落下することのないよう、境界からの距離をあけるとか、落雪防止のための雪止め設置することが必要です。もしそのような配慮なく、その地域において予想される程度の積雪で、屋根に積もった雪が隣地に落下する状態であれば、「設置または保存に瑕疵」があるとものと考えられ、隣家に現実的な損害が生じた場合、損害賠償義務が認められます。(但し、隣家のカーポートの設置状況によっては過失相殺の可能性もあるでしょう。)他方で、通常想定される積雪に対応できるだけの対策が取られていたにもかかわらず、その地域では、通常考えらえないような稀有な豪雪で、通常では考えらえないような量の雪が一時に降り続けたために雪止めが機能を果たさず、大量の積雪が一気に落下したような場合にまで責任はないと思われます。但し、気象状況は環境の変化で変わってくることもあり、どの程度が「通常想定される積雪」なのか判断がだんだん難しくなってきているのではないかと思われます。(以上 平成26年度 宅建業者法定研修会資料より引用)